Textwell for Macと「保存しない」へのキーボードアクセスについて

Textwell for Macが出た


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Sociomedia

遅れ気味の話題ですが。

TextwellはもともとiOS用のアプリで、DraftPadというアプリを前身としており、現行のアプリでいえば「Drafts」や「Note & Share」によく似ています。

要するに、「ファイル」という概念を覆い隠してきたiOS向けアプリの中でも(iCloud Driveの登場で方針が変わりましたが)、とりわけ「ファイル」ではなく「テキストデータ」の取り扱いに特化した、テキストを一時的に書き込むアプリといえます。(プログラミング用語ではない)スクラッチパッド系とでも言いましょうか。

入力したテキストを、さらに「アクション」によって処理できることが、このアプリの最大の特長なのですが、本質的にはファイルベースのエディタではなくスクラッチパッドであるということが肝要です。

IOSにおけるスクラッチパッドの価値

iOSにおいてTextwellの人気があるのは、iOSのUIが本質的にマルチタスクに向いていないことと、大いに関係があると言えます。

確かに、iOS4の昔から、プログラム的にはマルチタスクが実現されてはいます。しかし、一画面内に複数のアプリを表示できない上、勝手にバックグラウンドのアプリがスリープ状態になるiOSは、シングルタスク時代の名残を大きく残しています。要するに、デスクトップ端末用OSに比べ、テキスト入力の「入り口」が狭いのです

従って、Textwellが提唱する一ヶ所から入力してマルチに展開するというワークフローが威力を発揮するわけです。ツイートした後、タスクリストを追加し、ブログを書き始めるのに、ホームボタンを一度も押さずにすむということです。

Macでスクラッチパッド?

しかし、Macでは全く事情が違います。デスクトップ端末では画面内に複数のアプリを表示することが当たり前で、ディスプレイサイズの小さいMacBook Airでさえ、バックグラウンドのアプリが勝手にスリープすることはありません。当たり前ですが。

確かに、Macでもスクラッチパッドが必要な局面自体はあります。そんな時、人は例えばテキストエディットを立ち上げてつらつらとテキストを書き殴ったりするわけですが、そんなとき、逆にMac特有の問題が首をもたげてきます。

それは、各コントロールのクリッカブルボタンに、たいていショートカットキーが割り当てられていない、ということです。

Macでのフルキーボード操作に伴う面倒

かつては純然たるドザだった私がマカーになったとき、キレそうになったことはいくつかありますが(fenrirがないとかeClipがないとかウインドウ切り替えがわからんとか)、中でも最大のストレスだったのが、「次へ」とか「終了」とか「保存しない」とかがいちいち全部キーボードで選べないことです。タブキーを押しても選択が切り替わらないの、本当に馬鹿じゃないかと思いました。

一応、「システム環境設定 > キーボード > ショートカット」で「フルキーボードアクセス」を「すべてのコントロール」に設定することで、タブキーで選択候補を切り替えることは可能です。

しかし、依然として、各候補にショートカットキーが割り当てられているわけではありません。つまり、目的の候補を選ぶために、タブキーを連打しなければならない場合があるということです。

例えば、テキストエディットで未保存の書類を閉じようとした場合、以下のようなダイアログが表示されます。

未保存の書類を閉じる

ここで、キーボードによって最短で「保存しない」を選択する手順は、「⇧Tabを3連打してスペースキーを押す」です。そして、Macの多くのアプリが同様です。Windowsに慣れた身からすれば、まことに馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。

(追記 2014-11-19)スーパー勘違いでした。「⌘+Del」でできます。

まあ、「フルキーボードアクセス:すべてのコントロール」であれば、最初からスペースキーで「保存しない」を選択できるようになっているアプリも存在するのですが(Cot Editorとかmiとか)……基本的にMacの(あるいはCocoa製の)アプリにおいて、適当に書き殴った「裏紙を捨てる」ことは、地味ぃ〜に面倒なのです。

さらに、「スクラッチパッド」にまつわる面倒

付け加えるなら、Macにおける古典的問題である、全てのウインドウが(Windowsでいう)グループ化される点も面倒の種になります。

まず、「スクラッチパッド」と「編集中のファイル」を区別することが困難です。「メモ」と「テキストエディットのスクラッチパッド」と「テキストエディットの編集中ファイル」を切り替えながら作業するとかいう事態になると、なかなかに気が狂いそうになります。まあ、ウインドウ単位の切り替えを実現するアプリもありますが。

また、Macアプリは基本的に、全てのウインドウを閉じた後も終了しません。従って、テキストエディットで未保存の書類を閉じる場合、「ウインドウを閉じる(⌘W)」か「アプリを終了する(⌘Q)」かは、他に編集中の書類があるかどうかによって判断する必要があります。

そのためかどうか知りませんが、例えばWriteにおいては、文字通りのスクラッチパッド機能が実装されています。そうしたアプリを利用している場合はともかくとして、普通のテキストエディタをスクラッチパッドとして利用することは、まあそこそこには面倒なわけです。

で、Textwell for Mac?

そのような状況を考えれば、Textwell for Macに対して、1000円分に足るかはともかく、すくなくともWindows環境以上の価値を見いだすことは可能でしょう。

一方で、「入力したテキストを各種アクションに振り分ける」という用途においては、Alfred2(というかAlfred Workflow)という老舗がいることも見逃せません。


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iOSにおいてはSeeq+などに準えられましょうが、短いテキストの「入り口」としては、あきらかにTextwellよりも簡便なものです。

すると、複数行のテキストに対する一時的な受け皿、というターゲットが見えてきますが……個人的には、そうしたテキストの最たるものはコードスニペットなんですよね。

Textwellはいわゆるスクリプタブルなテキストエディタであり、JavaScriptによる拡張アクションによって高度な処理能力を持ち得るのですが、シンタックスハイライトが利かないのがけっこうつらそう。アクションソースエディタでだけできてもなあ。

アクションにショートカットキー割り振れるとか素晴らしいし、欲しいんだけれども、どこで使うかと言われるとあんまり思いつかない。Sublime Textを購入していなければもっと迷わず飛びつけたのになあ。